開発と環境保全

 交通と都市環境保全

1.都市交通問題

 都市交通が抱えている問題を挙げると以下の通りである。
(1)都市圏への人口集中によって交通需要が急激に増加したにもかかわらず、交通施設の容量増加は資金不足や用地取得難で伸び悩み、慢性的な混雑、渋滞が続いている。
(2)さらに、都市圏の拡大により、通勤通学距離は徐々に長くなっている。
(3)通勤通学交通の朝夕への集中が混雑に拍車をかけ、不経済な投資が必要となっている。
(4)人の業務交通や物流を主として自動車が用いられ、市内の道路混雑と大気汚染の原因になっている。貨物の少量多頻度化(宅配便など)、中小都市での通勤の自家用車用自動車利用が増え、道路混雑を助長している。
D都市内の駐車場不足と運転者のマナーの悪さから、路上に違法駐車がはびこり、交通を阻害し渋滞の原因となっている。
(5)現在のシステムは、身障者、高齢者のモビリティを確保することが難しく、新しい時代の要請に応えられていない。
 以上のような問題に対して、種々の対策が立てられ実施されているが、いずれの対策も多額の資金と用地を要するために進捗は遅い。そのうえ、ますます自動車への依存が強まっているので事態は深刻になってきている。

2.交通の都市環境への影響
 交通の都市環境への影響は、自動車・道路、新幹線・鉄道、航空機・空港、以上3種の交通機関の影響が顕著であり、さらに、それらによる騒音、大気汚染が頻繁に発生する問題である。

交通機関別環境への影響の程度
自動車・道路
新幹線・鉄道
航空機・空港
騒 音
振 動
低周波空気振動
大気汚染
水質汚染
日照障害
電波障害
:最も頻繁に発生する問題 ◆:やや頻繁 ▲:ときどき

3.大気汚染防止対策

 わが国の大都市における大気汚染防止対策は、窒素酸化物(NOX)、特に自動車から排出されるものの低減対策に最重点がおかれている。
(1)自動車構造の改善による低減:自動車排出ガス規制においてディーゼル車(直噴式)の増加に対して規制強化。NOX排出量の少ないハイブリッド車、電気自動車、メタノール車(NOXはディーゼル車の1/2、黒煙は殆ど無し)などの導入の試み。
(2)自動車交通量低減・交通流改善政策:自家用車利用者の公共交通機関への転換、バイパス建設等による都市内交通の低減、渋滞の減少、小口貨物の共同集配などによるトラック交通の低減、新しい物流システムによるトラック交通の低減。
(3)自動車交通需要管理政策:トラフィック・ゾーン・システム(車が物理的に都心を通り抜けられないようにする)、エリア・ライセンス・スキーム(都心部の一定区域を「車両進入禁止区域」とし、進入者は料金を払う)、路上駐車車両の取締など。
C総量規制:環境基準達成のために、固定発生源、移動発生源の総排出量を規制(東京都特別区等地域、横浜市等地域、大阪市等地域)。1985年の最初の目標年次に達成不可、その後何回かの見直しをしたが、いまだに達成は危ぶまれている。

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