地盤とジオフロント

 土の科学

1.地盤のはたらき

 地盤は、水や大気と共に人間を取り巻き、人間と相互作用をおよぼしあっている環境の基本的な要素の一つであり、人間を始めとする陸上生物の生存の基盤として、また、物質循環の場として極めて重要なはたらきを持っている。環境として地盤が果たしている役割は多様であり、かつこれらは複合的に発現されている。地盤が持っている物理的・化学的・生物的な性質および人間との長い関わり合いの中で認識されてきた社会的なはたらきは地盤機能と呼ばれる。

地盤機能(Geo-Functions)
●社会活動に関わる機能 施設支持機能
反復利用機能
施設施工機能
食料生産機能
●環境保全に係わる機能 生態系維持機能
保水・透水機能
洪水防止機能
水源涵養機能
水質・汚染物質浄化機能
地表温度・湿潤変化緩和機能
植物生産機能
アメニティー・景観機能
●その他の機能 地下資源機能
土器・陶器原料機能
建設資材機能
埋蔵物保存機能

2.土の力学

 砂が土粒子の集まりであることはすぐに分かる。しかし、粘土になると肉眼では簡単にその様子は分からない。陶器作りによく用いられるカオリン粘土を電子顕微鏡で眺めてみると、粘土も薄い板状の土粒子の集まりであることがよく分かる。粘土は数ミクロンという極めて細かな粒子からできている。つまり、粘土も含めた土の正体は、その間隙に水と空気を含んだ土粒子の集合体である。間隙の大きさは、砂では全体の体積の30〜40パーセント、軟らかい粘土では60パーセントにもなる。土は、多数の土粒子から構成されていることから粒状体と、また間隙の中に水や空気を含んでいることから多相系材料と呼ばれる。

カオリン粘土の電子顕微鏡写真
引用:James K. Mitchell(1976): Fundamentals of Soil Behavior, John Wiley & Sons, Inc, p.36

3.軟弱地盤とは?

 「軟弱地盤」の定義はかならずしも明確ではないが、土質工学用語辞典(土質工学会,1985)では、「建造物の基礎地盤として十分な地耐力を有しない地盤で、一般に、軟らかい粘土、シルト、有機質土、あるいは緩い砂質土などの土層で構成される。主として沖積平野、沼沢地、山間の谷部などに堆積した沖積地、あるいは埋め立て、盛土などの人工地盤などに多く存在する。軟弱地盤の判定は、そこに設けられる建造物の種類や大きさによって異なるが、一般にN値が0〜4のものをいう。」としている。軟らかい粘性土地盤が軟弱地盤であることは分かるが、緩い砂質土からなる地盤がなぜ軟弱地盤なのか?それは緩い砂質土地盤では液状化が発生するからである。それまで砂質土地盤は良好な地盤と考えられてきた。しかし、1964年の新潟地震において大規模な液状化が発生し、甚大な被害を被った。液状化という新たなタイプの災害に人々は驚愕し、砂質土地盤の評価は一変してしまった。液状化は緩い砂の持つ負のダイレイタンシー特性によって発生する。

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