海面とウォーターフロント

 地球温暖化と海面上昇

1.地球の温暖化

 南極ボストーク基地の氷底から採集した16万年前までの空気を分析した結果、二酸化炭素と気温とはきわめて良い一致を示すことが分かった。
 また、ハワイのマウナ・ロア観測所と南極で、1958年の国際地球観測年以降CO2濃度は、高精度で計測された。観測の開始以来、CO2濃度は毎年増加していることが分かった。濃度変動の周期は丁度一年であり、植物の光合成の活発な夏期にはCO2は減少し、逆に冬期には増加している。このような大気の気温上昇を招く気体を温室効果ガスと呼んでいる。例えば、CO2濃度が大気の97%を占める金星では、大気は500℃の高温である。火星のCO2濃度も95%であるが、気圧が地球のそれに比べて1/132であることを考慮するとCO2濃度の絶対量が少なく、-60℃の極寒である。地球のCO2濃度はわずか0.03%であり、これによって人類を含む生物の生存を可能にしているといえる。例えば、現存するCO2を固化して大気中から無くなれば、地球の温度は-15℃まで下がると推測されている。

ハワイと南極でのCO2濃度変化

2.海面上昇の予測

 海面水位の変化をもたらす角要因毎に気温・水温の変化にともなう寄与を解析し、それに基づいて予測がなされている。その要因は、(1)海水の熱膨張、(2)山岳氷河等小規模な陸上氷の溶解、(3)グリーンランド氷底の溶解、(4)南極氷底の溶解である。
 IPCC(Intergovernmenal Panel on Climate Change)によるBussiness as UsualのシナリオAに基づいた海面上昇の予測は、主に海水の熱膨張と氷河の溶解により10年間に6cm(3〜10cm)の割合で進み、2030年までに20cm、21世紀末までに65cm上昇する。この値は過去10年間にみられた3〜6倍の速度である。また、地域的には大きな変動が存在する。シナリオB〜Dのようにある程度の排出規制が進むことを前提にすると、海面上昇量は少し下回る。
 社会基盤の整備や防災対策に関わる土木工学としては、気温上昇や降水量、あるいは海面上昇の変動を想定した温暖化シナリオを作成して、それをもとにした予測実験や事前評価を行う必要があろう。
 海面が1.5m上昇した時の大阪平野のゼロメートルの拡大を考えると、その地域に産業・経済が集積していることから、これに対処すべき社会基盤の整備を急ぐ必要があろう。

大阪湾の海面上昇によるゼロメートル地帯の変化
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