都市と交通

 都市をつくる

 わが国の国内総生産(GDP)はアメリカについで世界第2位であり、一人当たり名目GDPもスイス、スウェーデンと並んで最も高い国となっており、豊かな国といわれている。しかしこくみんはそれに見合った豊かさを享受していず、豊かさは生活実感からはほど遠いものとなっている。
 豊かさについて、てる岡は「金銭だけで表される経済価値だけを豊かさだと考えるか、老人や障害者、自然環境をも含めて、すべての人々が生活の福祉をともに実現しようとする状態を豊かさと考えるか」と述べ、後者の豊かさの重要性を強調している。また森嶋は「資本主義国では分配の仕方に変更を加えることを好みませんから、国民の物質的幸福を増すには、純生産物の総額を増加させねばなりません。・・・福祉国家では国民の幸福を大きくするには純生産物をどう分配すべきかを考える。」と述べ、分配の重要さを指摘している。
 現代の都市は豊かさから照らして果たしてどうであろうか。エンゲルスや横山などの指摘した都市問題は随分改善されたにせよ、住宅問題、大気汚染、過密、貧困、社会的病理などの問題は現代においても大きな問題として残っている。そして新たに遠距離通勤問題、自動車交通問題、地価問題などが加わり、一地域的な視野からだけでなく地球的な観点から問題の把握の必要性も指摘されるようになった。自動車交通問題に限れば、交通事故、大気汚染や騒音・振動などの道路公害、道路渋滞、路上駐車を代表的な問題としてあげることができる。
 このような都市問題を背景に、どのような都市づくりを目指すのか、われわれ都市計画サイドからはどのような処方箋を用意するのか、重要な課題となっている。

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